実例に見る収納あれこれ
住まいの収納は、家族構成、収納方法、収納の量など住まう人十人十色で、それこそマチマチで個性的です。出来上がった間取りの新築住宅や、リノベーション済みの住まいでは、満足のいく収納が出来ませんし、快適なライフスタイルが実現できません。たかが収納、されど収納。いや毎日の暮らしの中では上手に収納しやすいということは大きな課題といっても過言じゃないですね。
一からデザインできるフルリノベーションなら、収納も一から設計できるし、機能的に使っていただけますね。
実際にリノベーションして最も変わったのは、片付けやすさと感じられる方や、むしろ収納を中心としたコンセプトで設計したなんてオーナーもいらっしゃるくらいです。
リノベーションの収納実例をご紹介させていただきます。参考にしていただければうれしいです。
目次
フレキシブルなレイアウトを実現した住まい
いざリノベーションをイメージしたとき、最初は思いつくままにイメージを収集し、そこから本当にやりたいことは何だろう?と削ぎ落としの作業を行っていった結果、最終的に辿り着いた理想は、白、グレー、木、の色数を絞った落ち着きのある空間であったそうです。
箱自体はシンプルに作り上げ、そこに季節の野菜や植物、アートなどで彩っていけるような引き算の家をイメージしたという今回のリノベーションで実現した収納は、ひとつの部屋のようなゆとりのある広さの空間に土間、WIC兼ギャラリースペースが大胆に広がっています。
元々収納のみの用途として設える予定でしたが、当面は必要最小限度の収納にして、あとは本などを飾るギャラリースペースにして、将来家族が増えたら収納を増設して、フレキシブルに活用していくように考えたレイアウトを選択したそうです。
収納であるWICがパブリックなスペースと共存できるよう、出番の多い洋服のみを厳選し、インテリア性の高い目隠しカーテンを設置し生活感を感じさせないアパレルショップのディスプレイ風にコーディネートされています。
奥様お気に入りのキッチンのバックカウンターはご主人のDIY作品です。奥様が集めた選りすぐりの食器や梅やらっきょうなどを漬けた瓶類がいくつか置かれています。
WIC兼ギャラリースペースの向かいにある和室の畳の下部は床下収納になっていて、シーズンオフの洋服や家電を仕舞っているそうです。
その時々のライフスタイルの合わせて、フレキシブルに対応できる自由な設計が出来るのもリノベーションならではの強みですよね。
56㎡の最高の広狭バランス
限られた予算の中で、通勤に便利な沿線を希望した結果、築44年のマンションで56平米という、決して大きくはないスペースになってしまいましたが、開放感のあるリビングを確保しつつ、家族3人が思い思いの過ごし方をする場所もきちんと確保するために、スペースをどれだけ賢く利用できるかが設計の鍵となりました。
とにかくリビングを広く保ちたかったので3人で同じ時間を過ごす場所はゆったりと、それ以外の場所は出来るだけミニマムに。そんな考えのもと出来上がった間取りは、WIC、キッチン、寝室という実用的な3つのスペースを、玄関から見て左側の壁の内側に収めたワンルームでした。
キッチンと隣り合うロフトは下階が子供部屋、上階が寝室になっています。コンクリートの壁の小さなスペースにおもちゃがいっぱいに詰まっている子供部屋は、誰もが子供時代に憧れた秘密基地を思わせるようなワクワク感がある楽しい空間になりました。
縦だけでなく上下の空間までうまく使い、スペースをとことん有効活用した設計によって生まれた15帖のリビングスペース。玄関側から窓の外まで広がっていくような大きな一つの空間で、家族3人が自由に過ごしています。
壁や廊下など、空間を仕切るものを最小限にしたフレキシブルなワンルームで家族3人が別々のことをしながらも、同じ空気を共有していられる絶妙な距離感がこのお部屋の魅力だと感じました。
夜更かしOKの、泊まれる本屋
今回のリノベーションは、ご夫婦共通の趣味を活かす為に、大胆な収納スペースを実現した実例です。この様な大胆なレイアウトは、リノベーションならではの魅力ですね。お二人の共通の趣味は、漫画です。二人で集めた漫画本の数は何百冊にも上るそうです。
コンクリートのグレー構成された空間に、アクセントで黒を効かせたメリハリのあるリビングの壁一面の本棚には、お2人の大好きな漫画や雑誌などがオシャレな本屋さんのようにディスプレイされていて、悠に100冊以上の本を収納することができます。
設計当初から『泊まれる本屋』の雰囲気を取り入れたい。という要望は、夫妻共通の趣味である漫画を魅せながら収納するためのアイデアとして思いついたのだと言います。
完成した2LDK+WICのプランの玄関扉を開けるとフリースペースに配置された本棚や黒枠のフィルター越しに見えるLDKの本棚など、たくさんの本が目に映ります。
フリースペースにはベッドを配置して“泊まれる本屋”の雰囲気を演出。「篭り感があったらいいなぁと思って、ベッドが少し隠れるくらいの高さで本棚を選びました。」と奥様。
この様な二人の共通の趣味を生かす収納は、こちらに住まう方だけのレイアウです。気に入った環境で、思い通りの毎日を暮らしていくというスタイルを実感させてくれます。
片付けが苦手だから、あえてオープン収納に
長く住む家だからこそ、流行りのテイストをただ取り入れるのではなく、シンプルさを念頭に置きつつも、ありきたりな感じにならないよう自分たちの好きを上手く組合せて空間に反映できる『飽きがこないデザイン』というコンセプトを大事にした今回のオーナーのキッチンはまさに自然体。
キッチンは限られた空間を有効的に使うため、壁付けで配置。ステンレスフレームキッチンを採用し、無機質な雰囲気にさりげなく溶け込むキッチン下のオープンな収納スペース。
片付けをするのが苦手ならあえてオープンな収納することです。隠れていないからどうしても片付けをサボれないそうです。
収納扉がない分スッキリしていて、まるで家具のように空間に溶け込んでいます。
ワインを愉しむための味わい深い収納
ご主人はソムリエの資格もお持ちで、奥様と共にワインを飲むのが趣味だというお二人がお持ちのたくさんのワイングラスとワインセラー。
そんなおふたりの素敵な趣味を空間に反映させるために、ワインセラーやグラスを空間の一部と捉え壁の中に埋め込んでしまうというプランです。
天井高が2.8mと恵まれた物件の特性を活かしてワインセラーの廻りに段差を設けて収納や小上がりのベッドスペースを配置した立体的なプランです。
マリンブルーの色が目を引く造作扉の先には壁一面にブラックチークを張り込んだアクセントの壁。こだわりの詰まったこの壁の中央にはワインセラー、ニッチ部分にはたくさんのおしゃれなワイングラスが並んでいます。
広い対面式のキッチンの後ろにはバックカウンターをキッチンの幅に合わせて製作し、その中には食器や調理器具がぎっしりと詰まっています。