#95 箱の本質
約65㎡の賃貸に5年ほど暮らしていたご夫婦。「子供が小学校に上がる前までに家を買って、いつでも帰ってこられるような地元をつくってあげたい」そう考えていたお2人はマイホームの購入を本格的に考えはじめます。
新築購入という選択肢は考えておらず、中古マンションを買ってリノベーションをしようと決めていたと言うお2人。それは、「アンティークな家具が好きっていうのもあって新しくてピカピカとしたものより、味わいのある古いものに魅力を感じることが多かったんですよね。それは家具に対してだけじゃなくて、自分が住む空間にも同じことを思っていて。綺麗だけどあまり満足していない間取りで真新しい雰囲気が漂っている新築より、築年数が経っている物件をリノベーションで私たち好みの空間にして住む方がずっと魅力的に思えたんです。」との思いからだそうです。
まず最初に中古マンションの購入を考えて、不動産屋を訪れb物件を紹介してもらいますが、普通の不動産会社の方なので、あまり詳しくは答えていただけなかったんです。それならちゃんとリノベーションを前提とした物件探しからサポートしてくれるリノベ会社にお願いする方がいいなと思ったんです。」とご主人。それからネットで物件探しからワンストップで行なっているリノベーション会社を検索し、その相談会に参加したそうです。
リノベーションの施工会社が決まったところでいよいよ物件探しを始めます。物件条件は、家族3人がゆとりを持って暮らせるよう70㎡前後のお部屋で日当たりが良いこと。そして仕事の帰りが深夜をすぎることが多いご主人が電車をつかわなくても帰宅できるよう、職場まで自転車で通えるエリアというのが絶対条件でした。
約2ヶ月で7~8件ほど内見して、窓も大きく採光や通風も確保できて、主人の職場からも自転車で15分以内の距離。それに加えて以前の家から歩いて5分くらいの場所だった
「私、模様替えをするのが好きなんです。だから自由に模様替えができるように極力シンプルな空間にしたかったんですよね。そこに自分たちで家具やグリーンを飾って家を完成させていく感じが良くて。」と奥様。
ご夫妻はスクラップ帳をデザイナーに見せながら、“極力シンプルな空間”というテーマを念頭に置きつつも「家の中でもご主人のお仕事である靴修理ができる広いスペースが欲しい」「今は必要ないけれど、子供が大きくなった時に個室がつくれるようにしたい」「オープンなキッチンにしたい」など具体的に取り入れたい要望を伝えたそうです。
そんなお二人にデザイナーが提案したのは『箱の本質』というコンセプト。余計なものを取り払ったシンプルな箱を形成し、そこに家具やグリーンを飾ることで空間を彩っていく、そんな「暮らしを楽しむ」という家の本質をカタチにしたお部屋をイメージしました。
そして完成したのは、廊下の存在しない1LDKのシンプルな箱。玄関扉を開けてまず目に飛び込んでくるのは、約4畳の広々とした土間と存在感のある本棚。土間にはご主人が靴の修理をする時に使うミシンや漉(す)き機が置かれ、家の中でも作業ができる十分なスペースを確保。広い土間はお子様の遊び場としても大活躍しています。
土間から続く扉のないオープンなリビングは約20畳という開放的な広さ。リビングの中心には、まるで箱が宙に浮いているかのようなアイランド型キッチンを配置。キッチンのデザインは、奥浮遊型のキッチンを参考に造作しました。スチールパイプの脚の上にシナ材で作った下台とステンレスの天板をのせ、床から少し浮かせることで軽やかな印象を感じさせます。
引っ越し当初、お子様が新しい家での暮らしにに馴染めないのではないか?と少し心配だったそうですが、リビングの扉がないので土間からLDKまで空間が全部つながっていて、息子の幼稚園のお友達が遊びにくると皆で家の中全部を使って走り回って遊んでるんですよ」とうれしそうに話された奥様。
「料理をするのが好きなので、自然と食器も集めちゃうんで、バックカウンターも並べた食器が映えるように極力シンプルなものにしてもらいました。」
気分や季節に合わせて想いのままに飾り付けていく”箱”…。「暮らしを楽しむ」という家の本質をカタチにしたお宅が完成しました。