「職住融和」とは、職=ワークスペースと住=プライベートスペースのどちらも兼ね備えた住宅、まさに在宅勤務に適した住宅のことを指します。
どうやら発信は、またもリクルート住まいカンパニーの2020年のトレンド予測とキーワード・住まい領域は「職住融合」を発表したことかららしいです。
皆様ご察しのとおり、背景としては2019年12月から始まったコロナの猛威に対抗するため、各業種企業のテレワーク化に他なりません。
もともと政府では、2020年に開催予定だった「東京オリンピック」に向けて東京都内の交通混雑を緩和するために「テレワーク」や「働き方改革」「子育て支援」を推進していたことも相まって、その傾向が急速に強まったということでしょう。
結果、可及的早急に対処することを余儀なくされたため、自宅の間取りの一部をオフィス仕様にする「家なかオフィス化」や、街の中のコワーキングで仕事する「街なかオフィス化」が生まれています。
特に「家なかオフィス化」については、テレワークに適した空間づくりに対処する手段としてリフォームを施す人が急増しています。
そこで期待されているのが、テレワーク、在宅勤務、あるいは副業で自宅でも仕事ができるように住まいをリフォームする「職住融合型住宅リフォーム」です。
具体的には、ワークスペースを設けるなど、どこかの部屋を改造して「勤務」ができるようにすることですが、これにもいくつかの障害があるようですね。
仕事に集中できる、あるいはTV会議をするときに使える環境にしたいと思っても、もともとそのような事態に対処するようなスペースがないなどの狭さによる制約や金銭的な制約があるのが普通です。
また心情的な問題として「オンオフの切り替えがしづらい」「在宅勤務をしようとしてもプライベートとのメリハリがつかなかったり、落ち着いて仕事をするためのスペースがない」などの事情もうかがわれます。
本来は食事をとるためのリビングのダイニングテーブルで在宅勤務をしている(55%)、家族構成別でみると、「既婚・子供なし」は60%、「既婚・6歳以下の子供あり」では71%にアップします。
また、リビングのダイニングテーブルに座っても、パートナーの要望や、子どもとの対応で、なかなか集中できないなどの無理な現状も深刻です。
もともと書斎などの専用ルームがあるという恵まれた人は16%で、リビングに仕事専用デスクや専用スペースを設けているという回答は15%にとどまっています。
そんな中、今ある現状を何とかやりくりして、DIYでなるべく費用を抑えて、それなりの空間を作り出すという涙ぐましい努力をされる方が増えています。
しかし懐事情もあって、テレワークのための自宅環境整備にかけた消費金額は「1万円未満」が56%と過半数を占め、「1~5万円程度」が21%、「5~10万円程度」が11%で、88%が10万円以下という結果でした。(リクルート住まいカンパニーのアンケート調査)
なぜこんなに皆さん苦労されているかというと「在宅勤務」という形態は今だけの暫定的な対応で「いつ終わるかわからない」という心理が影響していると考えられます。
コロナ感染状況によって容易に変化する現状で、9月にテレワーク体制が解除されるんじゃないかなどいう空気になりましたが、いままた3次流行の兆しが見えてくると、やっぱり在宅勤務の流れになったり大変流動的ななかで仕事の環境を変えるプチリフォーム止まりで、本格的な在宅勤務用のホームオフィスをつくるところまではまだ届いていない状況だと思われます。
「職住融和」とリノベーションは・・・
リノベーションはどうかというと、まだ在宅勤務でずっと継続していくという決断ができるほど機が熟してないし、もし思いきってリビングの一部を仕事スペース専用としてリノベした場合、「売却するときに売りにくくなる」「リセールバリューに影響する」など二の足を踏んでしまうような状況では、なかなか難しいと思います。
しかし東京オリンピックが1年延びたことによりテレワーク推進が延びたり、コロナの感染が勢いを取り戻し、先行きが不透明である状況で、企業も経営難から副業を認めるところも出てきたし、政府の「働き方改革」「子育て支援」のかかわる補助金を検討していることや、職住近接の意識が変わって、住むところの自由化が浸透していって都市集中から地方へ移り住むのがニュースタンダードになれば、大きな転機になる可能性があると思います。
出典:ビジネス+IT